デザインセミナー SeriesⅠ サービスデザイン
2014.9.3(水)~5(金)
終了しました
最初のシリーズでは、サービスのデザインについて学びます。サービスについての理論、サービスを理解するための体験に根差した観察手法、サービスデザインの方法論やツール、サービスをプロトタイピングし検証する手法などを学びます。同時に、テーマに沿った複数のチームに分かれてサービスデザインを実践することで、学んだ理論や方法論を具体的に適用します。
今世界中の企業がサービスデザインに注目しています。これは、従来のプロダクトをデザインすることから、顧客の体験をトータルにデザインすることが求められていることに起因します。プロダクトを売り切ることから利益を上げることの限界が見え、顧客価値の源泉が一つのプロダクトではなく全体的な体験に移るなかで、サービスの観点は避けて通ることはできません。ここではサービスとは顧客との接点を指し、サービス業だけではなく、製造業でも重要な事業的側面です。
サービスデザインは、サービス業だけのものではありません。製造業の付加価値は下流のサービスにシフトしつつあり、製造業がサービス化を進め、ITも所有から利用へシフトしています。サービスとは顧客との接点であり、企業にとって最重要のデザイン領域です。
これまでの固定観念を払拭し、顧客の視点から全てのサービスを捉え直すことで、サービスイノベーションを生み出す契機となる。例えば、店頭で顧客を丁寧に応対しているつもりでも、顧客にとってはわずらわしいだけでなく、早く意思決定しなければならないというプレッシャーとなり、全く逆の効果となることが多い。本当に顧客の視点から捉えなおすことで、違うデザインが可能となる。
これまでプロダクトやそのマーケティングだけに注目していたところから、それが利用される場面も含めてデザインすることで、プロダクトの価値が劇的に高められる。あるいは、プロダクト自体をサービスの観点から発想することにより新しい事業を生み出すことができる。
サービスは身近な概念かもしれないが、多くの場合ITの制約の中で自分の範囲を狭めるようなデザインに落し込むことが多い。そのような場合にこそ、顧客の価値の全体を捉えるサービスデザインのアプローチが求められる。ITも物質的世界に溶け込んでいる状況で、サービスデザインにより新しいITアプリケーションの可能性が開ける。
プロダクトは企業が製造し売ることで価値が出ますが、サービスの価値は顧客がそのサービスの創出に関わることで作られます。そのため従来のようにモノをデザインするようにはデザインできません。全く新しいアプローチが求められます。特に、人をどのように理解し、その関係性や行為をどのようにデザインするのかは、社会的な対象に対する正しい理論的理解を持つ必要があります。京都大学デザインスクールに蓄積された学際的なデザイン対象領域の理論、IDEOのdesign thinkingのノウハウ、博報堂の生活者発想による実践的なワークショップの融合により、他では得られない深い理解と実用的なスキルを身に付けます。チームで具体的なサービスデザインに取り組みます。
サービスという複雑で人が深く関わる対象に関しては、従来のエスノグラフィックな調査よりも一歩踏み込んだ文化的・社会的な理解が求められる。特に、人を何らかの潜在的要求を持つ実体と捉えるよりも、そもそも人々がどのような存在であるのかを見つめることにより、その社会の原理を解き明かすような文化的な方法を学ぶ。
人をニーズから捉えるのではなく、人の複雑で矛盾する存在を理解すると、デザインの可能性が広がる。例えば、立ちの鮨屋では、サービスをわかりやすくするという原理の逆を取り、メニューを置かず値段も伏せるが、それにより格別な体験を作ることができる。そもそも人々はお化け屋敷やジェットコースターを嫌がりながら喜んで体験する。人を柔軟に様々な視点から捉えることで、デザインの発想を広げることを学ぶ。
サービスを設計するには、顧客とのタッチポイントを全て洗い出しつなぎあわせてジャーニーを描き、それに対応するバックエンドのプロセスやチャンネルをマッピングすることで、サービスの表と裏を総合的に作り上げる必要がある。そのためのツール類の使い方を学ぶ。
サービスはプロトタイピングが難しいと言われるが、実際には新聞広告、パッケージ、契約書などをリアリスティックに作り込むなどの工夫(evidencing)により、サービスの体験を実感してもらい、その効果を検証できる。どの部分をどのようにプロトタイピングするのかというコツを学ぶ。
DAY 1
9.3 wed. 9:30~18:00
DAY 2
9.4 thurs. 9:30 ~18:00 & 18:00~20:00
DAY 3
9.5 fri. 9:30 ~ 17:00
招待講演「サービスドミナントロジックから見たデザインとイノベーション」
Dr. Stephen L. Vargo
Shidler Distinguished Professor and Professor of Marketing,
University of Hawaii at Mānoa
講演者紹介
これまでのモノを中心としたマーケティングから、サービスを中心としたマーケティングへと再定義する『サービスドミナントロジック』の概念を打ち立てた近年注目を集める研究者。現在この概念を中心にマーケティング理論が急速に発展し、多くの企業が注目している。アメリカマーケティング協会(American
Marketing
Association)よりマーケティング理論の発展に大きく貢献した業績をたたえる数々の賞を受賞(The
Harold H. Maynard Award, Sheth Foundation
Award、他多数)。2004年のLusch教授との共著である“Evolving to a New Dominant Logic for
Marketing”は、10年間で最も引用された論文である。また、経済学ならびにビジネス関連分野の研究者として引用数上位1%にランクしており、Thompson-Reuter
Highly Sited Researcherリストに記されている。
参考URL
http://www.sdlogic.net
http://shidler.hawaii.edu/directory/stephen-l-vargo/mkt
著作・関連書籍
Service-Dominant Logic:
Premises, Perspectives, Possibilities(2014)
The Service-Dominant Logic of Marketing:
Dialog, Debate, and Directions(2006)
原 良憲
京都大学経営管理大学院 教授
【専門分野】
知識活用サービス・イノベーション
【略歴】
東京大学 工・電子工学卒業。東京大学大学院
工学系・修士修了。京都大学博士(情報学)。日本電気株式会社(NEC)北米,日本の研究拠点にてメディア情報管理,イノベーションマネジメントなどの研究・事業開発に従事.Stanford大学客員研究員,NEC北米研究所(シリコンバレー)Department
Head.同ベンチャーデベロップメントセンターDirector(兼務)NECインターネットシステム研究所研究統括マネージャー(関西研究所統括)などを経て,2006年4月より,京都大学経営管理大学院教授.2010年より,京都大学経営管理大学院附属経営研究センター長。
山内 裕
京都大学経営管理大学院 講師
【専門分野】
組織論、エスノグラフィ、サービス科学
【経歴】
京都大学工学部卒業、同情報学研究科修士、UCLA Anderson School of Management Ph.D,
Palo Alto Research Center (a Xerox Company)
研究員を経て、現職。サービス学会理事。エスノメソドロジーの観点から、組織における実践(practice)や相互行為(interaction)の研究に従事。特に最近は、サービスの相互行為に注目し、鮨屋、イタリアン、フレンチ、ファストフードなどのフィールドでのやりとりをビデオ撮影し分析している。京都大学デザインスクールでは、デザインエスノグラフィ、組織デザイン、サービスデザインのテーマで教育・研究を行っている。
鈴木 智子
京都大学経営管理大学院 特定講師
【専門分野】
消費者行動論、国際マーケティング
【経歴】
聖心女子大学文学部卒業、一橋大学大学院国際企業戦略研究科修士(MBA)、同博士(DBA)。日本ロレアル(株)のプロダクト・マネージャーやボストン・コンサルティング・グループのコンサルタントなどを経て、現職。
平本 毅
経営管理研究部経営研究センター 特定助教
【専門分野】
会話分析、エスノメソドロジー
【経歴】
立命館大学産業社会学部卒、同社会学研究科博士
石川 俊祐
IDEO Senior Design Lead
プロダクト・空間デザイン、サービス・ブランド体験の創出から行動のデザインまで幅広い領域で活躍。英国セントラルセントマーティンス卒業後、英国プロダクトデザインオフィスAZUMI、パナソニックデザイン社、英国のプロダクト&サービスイノベーション会社PDDのCreative
Leadを経て、2013年に帰国後、IDEO
Tokyoの立ち上げに従事。大学や経済産業省などと日本におけるデザイン思考教育にも携わる。
岩嵜 博論
株式会社博報堂 イノベーション・ラボ ストラテジックプラニングディレクター
博報堂において国内外のマーケティング戦略立案やブランドプロジェクトに携わった後、近年は生活者発想によるビジネス機会創造プロジェクトをリードしている。専門は、エスノグラフィックリサーチ、新製品・サービス開発、ビジネスデザイン、ユーザー中心イノベーション、プロセスファシリテーション。慶應義塾大学大学院修士課程、イリノイ工科大学Institute
of
Design修士課程修了。共著に『アイデアキャンプ―創造する時代の働き方』(NTT出版)、『FABに何が可能か
「つくりながら生きる」21世紀の野生の思考』(フィルムアート社)。
田仲 薫
IDEO Design Lead
株式会社 博報堂にてブランディング、human centered
design領域にて、商品やサービス開発のデザインコンサルティングを担当。2006年からIDEOのプロジェクトに参画、2011年よりIDEO
Tokyoの立ち上げに従事。現在、ブランドコンサルタント、デザイナーとして、幅広いクライアントのイノベーションプロジェクトに携わる。
板井 麻美子
株式会社博報堂 イノベーション・ラボ コンサルタント
外資系メーカー・マーケティング業務を経て、2002年より博報堂 ブランドデザインに参画。ブランド戦略立案からデザイン戦略および開発に至るまで、様々な分野でのブランドコンサルティング業務に従事。2008年よりエスノグラフィを活用したイノベーションデザイン業務に従事。「博報堂エスノビジョン」プログラムを立ち上げ、戦略的視点からイノベーション具現化のためのプログラムおよびソリューション提供を行う。
IDEO(アイディオ)
米シリコンバレーのパロアルトに本拠地を置き、世界中に10拠点を展開する、イノベーションとデザインのコンサルティング会社。米アップルのマッキントッシュに付属した初代マウスをデザインしたことで知られているが、近年はハードからソフトのデザインへとその領域を広げている。デザイン・シンキングを用いて、民間から公共まで幅広いクライアントのイノベーションを行っている。
著作・関連書籍
クリエイティブ・マインドセット
想像力・好奇心・勇気が目覚める驚異の思考法(2014)
デザイン思考が世界を変える(2014)
Creative Confidence:
Unleashing the Creative Potential Within Us All(2013)
イノベーションの達人!
― 発想する会社をつくる10の人材 (2006)
発想する会社!
― 世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法(2002)
博報堂イノベーションラボ
生活者発想で、単なる消費者としてではなく、「生活する主体」という意味で人間を捉え、その意識と行動を研究している。価値観の変遷を時系列調査で追跡する、実験的な手法から未来への兆しを見出す、生活の現場へ飛び込み生活者と一緒に考える…など、生活者に対する多角的かつユニーク観点を持つ。
著作・関連書籍
シリアル・イノベーター ─ 「非シリコンバレー型」イノベーションの流儀(2014)
未来を洞察する(2007)
デザインセミナー SeriesⅠ サービスデザイン
日程:
平成26年9月3日(水)~5日(金)
会場:
京都リサーチパーク
京都市下京区中堂寺南町134
http://www.krp.co.jp/access/
受講資格:
なし
定員:
30名程度
参加費:
正会員A 165,000円(消費税込)(受講料相当額の半額)
正会員B 300,000円(消費税込)
非会員・一般 300,000円(消費税込)
(受講料・昼食・レセプション・コーヒー代含む ※宿泊費は含まれておりません)
募集期間:
平成26年6月20日(金)~8月8日(金)
主催:
デザインイノベーションコンソーシアム
京都大学デザイン学大学院連携プログラム
協力:
株式会社博報堂、IDEO Tokyo
問合せ先:
デザインイノベーションコンソーシアム 事務局
京都リサーチパーク株式会社 担当:山口
Tel: 075-315-8522
mail: info@designinnovation.jp
http://www.designinnovation.jp