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「Professional Design Camp 001」レポート

 

「2025年 徒歩5分圏内の空間の暮らし方を考える」
開催日:2014年11月18日〜20日
会場:博報堂セミナールーム

Day 1〜 イントロダクション

リードカンパニーであるNTTとダイキン工業の主導で行われた今回の集中プログラム。会員各社から約30名の参加者があったほか、京都大学大学院情報学研究科の石田亨実行委員長、同デザイン学ユニットの十河卓司実行副委員長をはじめドクター在籍の学生さんたちも参加された。
1日目は、石田実行委員長のご挨拶のあと、オープニングトークとして実行委員の大野健彦氏(NTTサービスエボリューション研究所)および小沢智氏(ダイキンテクノロジーイノベーションセンター設立準備室)のお話でスタート。
続いて、博報堂イノベーションラボの粟田恵吾氏から「イノベーションの方法」と題したミニレクチャー。「“イノベーション” を取り巻く企業の課題」について紹介があったあと、今回のプログラムでの終着点でもある「シナリオ記述」の重要性について、スープ専門店「Soup Stock」の例を交えながら説明が行われた。

アイスブレイク・チームビルディング 〜 「徒歩5分地図」を手始めに

今回のプログラムのテーマは「2025年 徒歩5分圏内の空間の暮らし方を考える」で、生活者視点から未来を洞察し、イノベーション創造による新たな価値の創出に取り組むものである。30名あまりの参加者が5チームに分かれてアイデアを出し合い、最終日にはそれらの内容を集約してプレゼンテーションを行うことになっている。
実際にワークに入る前には、ファシリテーターの板井麻美子氏(博報堂イノベーションラボコンサルタント)から、ポストイットの活用法をはじめワークを進めるにあたっての約束事の説明があり、実行委員のメンバー紹介とともに各チーム内での自己紹介が行われた。自己紹介は、事前に各自に課せられていた「徒歩5分地図」を用いて、「なぜその場所を選んだのか」「その圏内には何があるか」「その圏内のいいこと、困ること、問題点は何か」といったことを1人あたり持ち時間3分で発表していった。ここで早速、自分の気づいたことをポストイットに書いていく。これは、互いの“気づき”のシェアを行うためだ。


付箋はアイデアを積み上げていく際に欠かせないアイテム。発想を書き留めて、チーム内で情報を共有するのに有用だ。

ちなみに、最大6名で編成された各チームはあらかじめランダムに決められており、年齢や性別、所属先などもバラバラ。初対面のメンバーはこのときはじめて言葉を交わしたという人も多くいたようだ。
「チームビルディングの成功の秘訣は何か。チーム内で話をするにあたっては、話すことよりも聞くことが大事。そして、良い意見を出してもらうためには、質問するプロセスも大事である。良い質問をどんどんするように心がけること。もしかするとひとつの発言が種となり、いずれ花開くかもしれない。花を開かせるような質問と話し方、つまりファシリテーション技術、気づきを引き出す技術を意識すると良い」と、板井氏からのアドバイスがあった。


休憩エリアには温かいコーヒーやクッキーなどが用意され、脳へのエネルギーチャージも万全。参加者どうしの交流にも一役買っていた


初日の昼休みは、チェキで一人ひとりのポートレイトを撮影。名前や自己紹介文を記入して、ホワイトボードに貼り付けていった。相互交流はもちろんチームビルディングの一助になっていた


休憩時間は名刺交換会に早変わり。異業種交流会の様相を見せていた

未来イシューの策定

午後からは、未来イシューの策定に先立ってエクササイズとして「10年後の自社、あるいは自分の姿」を考えてみた。参加者のひとりである某家電メーカー勤務の男性からは、「家電の種類が減り、選択と集中が進んでいるのではないか」という意見が出たほか、住宅メーカー勤務の男性からは「個人住宅の建築数が減り、建築産業へとシフトしているかも」という声があった。
板井氏からは、「未来を考える“考え方”というのは、3つある。1つは“あるべき未来”。“べき論”の発想の組み立てから未来を語る方法。2つめは“ありたい未来”で、そもそも自分がそうあってほしいと思うもの。3つめは“ありうる未来”。ニュースや噂、本に書いてあったことから、“ないことはない”と考えることができる。未来洞察では未来をこの3つでとらえて考えて、自分たちが作っていく未来をどう描けるか考えてみたい。また、未来を考えるアプローチには2つある。現状立脚で“今できること”から考える。もうひとつは“理想的なあるべき姿”から考える」とのコメントが加わった。
いよいよ「2025年 徒歩5分圏内の空間の暮らし方を考える」という課題に関する未来イシューの策定を行っていくが、今回のプログラムでは事前課題として、各チームにそれぞれ異なる特色をもつ地域マップが配布されていた。各チームに課された地域マップは次のとおり。

Aチーム:1970年代に開発された大規模ニュータウン〜京都市・洛西ニュータウン
Bチーム:昔からの都心部にある住宅地〜東京都文京区・根津
Cチーム:都心部で最近開発された集合住宅〜東京都江東区・東雲
Dチーム:ベッドタウンの新興住宅地〜横浜市緑区
Eチーム:都心近郊の商店街〜川崎市中原区武蔵新城駅

その街が迎える2025年の徒歩5分圏にはどんな“イシュー”があるのか。自分が住みたくなる10年後の街のあり方について考えていく。ここではまず、板井氏によって示された3つの未来の考え方の1つめである「ありたい未来」について考える作業から。各自が事前に考えてきた「未来イシュー」を洗い出し、KJ法(※)にのっとってキーワードを整理。それぞれが考えた未来像の背景から「新しい意味・隠れた意味」を見出してまとめていった。チームごとにホワイトボードやポストイットを活用しながら、活発な議論が開始された。

※文化人類学者の川喜田二郎(東京工業大学名誉教授)が考案した情報整理手法。収集した情報をカード化し、断片的なアイデアや定性データを統合し、発展的にまとめる手法のこと。

議論後には、チームごとに3つ程度の情報に集約して発表を行った。そこに現れた「未来イシュー」の一例を示そう。
「1970年代に開発された大規模ニュータウン」を想定したAチームでは、世代のバランスが悪い、高齢化率が高い、住環境が古くなっていることなどがこの街の話題としてあがった。その中から策定した未来イシューは、①交通、②生活環境、③高齢者の3つ。まず、現状の移動手段の大半がマイカーという中で高齢により運転が難しくなってくる人も多く、オンデマンド交通やスマート輸送の発達が考えられると発表があった。当然コストの問題が出てくるため、コミュニティバスの充実やコミュニティサイクルを使える仕組み作りを行う必要がある。また、②の生活環境については、行政主体から住民主体によるインフラ整備へ移行を予想。高齢化したニュータウンが空洞化することで、行政による整備が間に合わなくなるという背景がある。③の高齢者については、これまでの「リタイア後は非生産者」という考え方から、「生涯生産者」として活躍することが考えられるということだった。高齢者がいきいきと活動的に過ごす街であれば、若者世代も再び戻ってくるのではないか、という意見もあった。
このように各チームともに「ありたい未来」を抽出する作業で初日を終えた。


1日目の夜には、懇親会を兼ねた東京湾クルーズへ出発。天候にも恵まれ、美しい夜景とビュッフェ料理を堪能した参加者たち。他チームのメンバーとも交流を深める機会になった

Day2 〜 スキャニングクラスターの策定

「ありたい未来」について考えた前日に続いて、2日目は「ありうる未来」を考える。 それに先立って、各国のニュースやweb情報から集められた「スキャニングマテリアル」集が配布され、それらの情報からピックアップしたマテリアルをKJ法でクラスター化して、各自がスキャニングクラスターを作成する作業に入る。ここではいったん「2025年 徒歩5分圏内の空間の暮らし方を考える」というテーマから離れて、直感的に気になったトピックを「これまで知らなかったもの」「新鮮に感じたもの」という基準でピックアップするのがポイントとなる。 その中から3つの仮説を立て「スキャニングクラスター記入シート」を完成させていったあとは、チーム内でそれらを共有して、さらにその中から5つ程度の仮説作りを行った。ここでも「新鮮な気づき」や「ワイルドな〈不確実性〉を重視」しつつ、「具体的なタイトル」で読む人にインスピレーションを与えることがポイントとなる。

インパクトダイナミクス

午後からは、未来イシューとスキャニングクラスターを用いた「インパクトダイナミクス(強制発想)」の作業を開始。

表の横軸はこれまでに導出した未来イシュー、縦軸は社会変化仮説(スキャニングクラスター)である。未来イシューで想定した事柄とスキャニングクラスターで想定した事柄が出会ったとき、どんなことが想起されるか。その事象について、思いつくままにアイデアをポストイットに記入していく作業を行った。生活者の視点から、生活者の体験として具体的に発想するのがポイントとなる。

未来シナリオ創造とアイディエーション

続いて、インパクトダイナミクスによって導出した機会を描き出し、サービスアイデアを創出する作業を行う。サービスとは、従来型の接客対面サービスもあっていいが、現代ではITやメディアを通したもの、バーチャルにおけるサービス提供の仕組みが作られていることから、「経験を前提とした価値の提供」ととらえている。サービス業なのか製造業なのかと簡単に括ることができない新しいビジネス、つまりプラットフォーム的な産業が今世紀に入って登場し、イノベーションの芽が生まれているという説明があった。具体的には、アメリカ発のカーシェアサービスである「zip car」やタクシー配車サービスの「UBER(ウーバー)」などが例にあげられた。
これらから考えられるサービスデザインのポイントとしては、①サービスコンセプトが明解であり、一連の経験に一貫する提供価値の存在がある、②圧倒的に快適なユーザーエクスペリエンス、③ステークホルダーのエコシステム、であるという説明があった。
サービスデザインを考えるとき、顧客価値とビジネス価値が両立するソリューションであることが大事であり、エクスペリエンス側とビジネス側を同時に考える必要がある。ここではまずエクスペリエンスデザイン側から検討に入る。サービスの主役となるペルソナとクライテリア抽出を行い、自分自身が使いたくなるような、生活者側の視点を魅力的に含んだサービス内容を描き出す。次にビジネスデザインを、サービスプラットフォーム、ステークホルダーマップ、サービスブループリント、ビジネスモデルキャンバスごとに設計し、最終的にプロトタイピングの作業へと進んだ。

day3 〜 未来シナリオ・アイデアプロトタイピング


最終日のプレゼンテーションでは、パワーポイントやホワイトボードでの説明だけでなく、色画用紙や粘土を用いた工作作品による発表も行われた

前日から引き続きプロトタイピングの作業である。作業にあたっては、シナリオを作るほか、写真やイラストなどを交えたストーリー化も行った。また、簡単な工作なども用いるチームもあった。
夕方までにこれらの作業を終了し、いよいよプレゼンテーションタイムである。発表形式はパワーポイントのみならず、工作作品を舞台にプレゼンテーションを繰り広げたチーム、ロールプレイで臨場感ある説明を行ったチームなど、多くの工夫が見られた。各チーム持ち時間は10分の予定だったが、予想以上に熱が入り、30分以上もかけて行ったチームもあった。他チームの発表を聞きながらフィードバックシートにユーザー側の魅力やビジネスとしての魅力、“気づき”を含めた感想を記入し、今後に向けてのレビューを行って3日間のプログラムを終了した。

「2025年 徒歩5分圏内の暮らし方を考える」をテーマに議論を重ねた「Professional Design Camp」。3日間にわたって開催されたこの集中プログラムでは、普段は異なる業界で活躍する参加者間で活発な意見が交わされ、イノベーションへの手がかりを見つけるとともに、将来の恊働へとつながる手応えを得た。


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