Design Seminars

「Professional Design Camp 004」レポート


京大デザインスクール式デザイン思考の実践 〜「ロボット共生社会を予想する」をテーマとして〜
開催日:2018年1月23日〜25日
会場:京都リサーチパーク

設立5年目を迎えるデザインイノベーションコンソーシアムでは、これまで京大デザインスクール式のデザイン思考を価値創造プロセスとして実践してきました。4回目となる今回のデザインキャンプは、「ロボット共生社会を予想する」をテーマに、教育心理学と機械工学という異なる視点から知見を得、多様な業界の参加者の意見を交換しあうメソッドを3日間にわたって実施。ファシリテーターに、「場とつながりラボhome’s vi」代表理事の嘉村賢州氏を迎え、遠くない「ロボット共生社会」に向けたビジネスコンセプト作りを行いました。



Day 1

今回のキャンプには多様な業界から17名が参加し、A〜Dの4グループに分かれて進行しました。
1日目のワークでは、
・ 参加者どうしの価値協創を通じて、未来に求められる新たな価値を生み出し、そのプロセスを学び合う
・ さまざまな企業から集う参加者でグループを組み、共通のテーマのもとで、3日間で新たな価値の創出を試みる
・ キャンプのテーマである「ロボット共生社会」に向けて取り組むべき未来のビジネスコンセプトを発見する
という目的をまず確認します。また、これらを通じて3日間で京大デザインスクール式デザインプロセスを習得し、ロボット共生社会に向けての知見を獲得するとともに、未来のビジネスコンセプトを創出することを目指します。



まずはグループごとに簡単な自己紹介からスタート。
続いて、「絵による伝達競争」(ウォーミングアップ)、「嘘つき自己紹介」(アイスブレイキング)などを通じて、午前中はグループ内のコミュニティビルディングをしました。
午後からは「学びあいのワーク」に入ります。ここでは、異なる業界で活躍するメンバーたちが、それぞれの業界の「過去」「現在」「未来」の推移を再確認する作業を行いました。なぜそういう推移を経てきた(経ていく)のかについてキーワードを洗い出し、メンバー間で共有するなかで、多様な業界の未来の兆しへの理解を深めました。
ここまでの意見交換からインプットした情報をもとに、ハーベスト(収穫)を行います。意見交換の中で感じたことを「お困りごと・ニーズ」「問い」「気づき・発見・洞察」「アイディア・プロトタイプ」の4つに分けて整理した上で、それぞれの業界にあるお困りごとへの理解を深めておきます。



次に、京都大学教育学研究科の楠見孝教授(教育認知心理学)の講義が行われました。テーマは「人-ロボット協働場面の評価について〜心理学の視点から〜」。現在の日本では、多様化するニーズによって大量生産がしにくくなっていることや、後継者不足、労働人口の急激な減少、個人消費の伸び悩みなどの問題があり、それらを解決するとともに、世界市場における競争力を強化して国内の製造を拡充するという課題を抱えています。そこで、実際にものづくりの現場に導入されているさまざまなタイプのロボットや機械の動画を見た人たちに、どのようなロボット・機械に親しみや恐怖を感じるのか、協働したいと思うのかを質問紙法で調査したところ、実際にロボットに携わったことがあるかないかという経験レベルで親近感が大きく乖離していることや、ロボットの外見が協働作業へのモチベーションに影響を与えることがわかったそうです。



心理学の視点から見たロボット協働についてインプットしたところで、「そもそもロボットとは何か」を再度自身に問い掛け、「ロボット」という概念を問い直す作業を行いました。そのために「人間の代わりに戦ってくれる巨大戦闘機」というように、「ロボット」という言葉を使わずにロボットを説明する作業を行います。それを可視化するために用いたのが「概念再定義マンダラ」で、ロボットを定義し直した先にある未来のサービスや社会像を想像し、グループ内で互いの意見をシェアして、アイデアを発展させていくというプロセスを体験して、1日目を終えました。

Day 2

2日目はトーキングオブジェを用いたチェックインのあと、スピードキャッチによるアイスブレイキングで、「改善」と「イノベーション」の違いを体感したところからスタート。 この日のワークの目的は「ロボットが当たり前に共生しているような未来では、どのようなテクノロジーが発展していて、どのような世界が広がっているのか?」について探求すること。未来におけるイメージの解像度を高めて描いていきます。



まずは、京都大学大学院工学研究科の椹木哲夫教授(機械理工学)による講義が行われました。テーマは「人とロボットのインタラクションについて、工学の視点から」。
椹木先生によると自動運転も一種のロボットだそうですが、雪の日の走行中を例に、「目の前に近所で飼われている犬が飛び出してきた際にロボットはどのような判断をすべきか」というお話がありました。「急ブレーキをかければ犬は53%の確率で生存する一方で、18%の確率で車は損傷し、4%の確率で怪我をするだろうという計算がビッグデータによって導き出されますが、もし飛び出してきたのが自分の愛犬だったら? 犬ではなく人であったら? 瞬時にどの判断をロボットはすべきなのか、倫理体系を持たせないといけない」。
あらかじめプログラム化した規則に従って動かすのか、マシーンラーニングによってトライアンドエラー方式で学んでいくのか。自動化されたものと人がどう折り合っていくかという課題があるということでした。また、人と機械(自動化)の役割分担については、どちらかが100%を担うのではなく、両者が協力し合って100%になるのが望ましいというお話もありました。



さて、講義のあとは前日の作業を一旦振り返るために、ホワイトボードを使ったハーベスト作業を行いました。グループでハーベストをする際に重要なのは、メンバーの考える内容にピンとこなかったり、わからなかったりしたら、質問をすること。イノベーションを生むためには相手の意見を受け止めないといけないと嘉村氏は話します。
「人の話には、自分にとって未知の世界や知らない世界のことがあるはずですが、それを自分の過去の経験に吸着して理解したり、捉えたりすることがあります。そうするとただ単に自分の過去の経験が強化されるだけになって、情報の共有が起こらない。それでは自分の価値観の枠が広がっていきません」。誰もが陥りがちなことだけに、このことを意識しながら、新しい気づきや発見、出会いを通じて、自分の価値観を広げることが、イノベーションには重要だということです。
また、ハーベストに「お困りごと」を書く際は、自身の業界だけではなくお客さんの業界にどんなお困りごとが生まれるか、将来のビジネスになりうるかどうかを考えて書くことがポイントなのだとか。「問い」に関しては、たとえば「新しいコップを考えましょう」ではアイデアが生まれにくくても、「動き回る子どもでもこぼさないコップを考えましょう」とすればいろんなアイデアが生まれてくるように、良い問いが良いビジネスコンセプトにつながるというアドバイスもありました。


午後からは未来のビジネスコンセプトを探究するために、
・ 「こんな未来になるのではないか?」という未来社会のイメージの解像度を飛躍的にあげる作業
・ 良質な問いとアイデア発想で、未来を作るアイデアやコンセプトを生み出していく作業
・ グループがどういう状態であればイノベーティブな時間を過ごせるのかを探求していく作業
を行いました。


そもそも、イノベーションを生み出せる人と、生み出せない人の違いは何か? それぞれが考える人の特徴を列挙してグループ内で情報を共有、結合、発展させていくなかで、大事だと思うことをまとめ、最終的にまとめた内容を「この3日間大事にしたい3か条」として発表、「ポジティブに!」「まずやってみる!」「プロトタイプをドンドン出す!」などの目標が並びました。
続いて、ブレインストーミングを行うにあたって大切なのは「質より量」であることから、量を出す訓練のひとつとして、◯を使った絵を時間内に多く描く作業を行いました。
また、シルクドソレイユの誕生を例に、固定観念を外すことの重要性について紹介があり、常識を疑うための〈反転-増幅〉のワークシートを使ったレッスンを行いました。たとえば一般的なハンバーガーのイメージ〈安い〉を反転させると〈高い〉となり、〈安い〉増幅させると〈タダ〉となるというように、シートに反転語と増幅語を書き出していくというもの。実際に近年は高級ハンバーガーや健康志向のハンバーガーが出てきたように、〈ハンバーガー=安い=不健康〉などというイメージから脱した商品開発が行われています。ここでは「ロボット」を〈反転-増幅〉させて新しいイメージを探りました。






ここからは2日目の山場となるプログラム「シェアードビジョン」の作業を通して、未来社会のイメージの解像度を飛躍的に上げていきます。
「ロボットが当たり前に共生しているような未来ではどのようなテクノロジーが発展していてどのような世界が広がっているのか」を考えるために妄想を働かせ、具体的な構想を思い描く作業です。私たちの身近に起こる「5年から10年後」「20年後から30年後」の未来に広がっている風景をたくさん付箋に書き出してマトリックスに貼り出し、未来の解像度をどんどん高めていきました。
最後はワールドカフェ方式で、さまざまな人との対話を通じて知識やアイデアをつなげて考えを広げていき、最終的に自分が仕事を通じて生み出したい未来の社会はどんな社会なのか、ハーベストをしました。


Day 3


最終日は、ジグゾー法を用いたブレインストーミングの探求からスタート。これは各グループに用意された資料に目を通して内容を理解したあと、別グループとメンバーをシャッフルし、資料のポイントを新メンバーに説明してアウトプットをするという訓練。ここでは「ブレストを知らない部下にブレストとはどんなものかを説明する」というお題のもと、簡単なプレゼンが行われました。
続いて、資料から学んだことをもとに、「2020年東京五輪、わたしたちはどうやって世界を驚かせようか」をテーマに各グループでブレスト体験をし、最終的に案を3つに絞り込み発表を行いました。


今日は、このキャンプの最終目標でもある「新しいビジネスコンセプトを生み出す」ことが目標です。ここで改めて、3日間の学びを統合します。ここまでの「トレンドの学びあい」「概念の再定義マンダラ」「反転-増幅ワーク」「シェアードビジョン」「ワールドカフェ+ハーベスト」で書き込んだシートの内容を参考に、そのなかからの気づきを書き出していきます。そして未来を考えていくためにさまざまな角度の「問い」を10以上作ることに挑戦。「問い設計シート」に書き込んだ問いを、より発想を促す問いに変換させるために拡張させていき、創造的な問いを生み出す作業を行いました。
そのなかから、新しいビジネスビジネスコンセプトにつながるような問いを選び出し、思考を深める「ホワイトペーパー(一人ブレスト)」を体験。
グループ内でホワイトペーパーの内容を共有して、関心を持った問い(自分自身がわくわくして探求していきたい問い)を選び出し、「未来の兆しを探求するシート(深めるための問いかけ集)」で〈①未来の兆し、②プロトタイプ、③コンセプト〉を作成。参加者全員で互いのシートの内容を確認し、①自分と関心の近い問いを持った相手、または②一緒に組むことで化学反応が起こりそうな相手、③自分のものより良いと思われる相手、と新たに3〜5人のグループを構成しました。この新しいグループで分科会を作り、コンセプト作りを行います。

分科会では、メンバーと共に探求できる問いを作り出し、各自で作り出した問いを入り口にブレストを行い、〈①未来の兆し、②プロトタイプ、③コンセプト〉の探求を進め、最終的に5分程度のプレゼンを行いました。

通常は半年くらいの時間をかけてコンセプト作りを行うものだそうですが、今回は70分程度という駆け足による体験。しかし、このプロセスを体験することで、世の中のニュースや話題へのアンテナが敏感になり、自分のなかのデータベースに蓄積されていくことによって、未来への解像度が上がってくるようになるそうです。


最後に、嘉村氏からキャッチコピー(コンセプト)を作るためのテクニック「ブレインライティング」が紹介されました。
・ A4用紙を一人につき6枚用意する。
・ 素案でいいのでコンセプトキーワードを3つ書く
・ 次の人が、3つのキーワードを発展させたキーワードを書く
・ さらに次の人がそこから発展させたキーワードを書く
ということを繰り返すことで多くのコンセプトの中から最適なものが生み出されていくのだとか。
近年はコンセプトを明確にせず、「◯◯4.0」などの安易な名付けに流れる傾向がありますが、きちんとコンセプトを打ち出すことで、業界をリードできるような存在になれるということでした。


もどる